9月30日
○上野の森美術館で「ダリ展」を観た。あの20世紀の奇人、巨人、変人、怪人、が住むスペインのカダケスのダリの家に行った。そしてダリとその夫人ガラと2時間ほど共通の時間を過ごした。誰でもやって見ることだよ。ダリの美術館でいきなりダリに会いたいと言ったら本当に実現してしまったのだ。アンディー・ウォーホルに会った時もちょっとそんな感じで彼のファクトリーに入り込んだ。

9月29日
○若い人達には大して興味のないような事柄、例えば蟻や金木犀や鯉や鳩などの自然にばかり眼が向いていて、世の中の時事問題にはほとんど関心を示さないぼくに気付いている人は多いと思うけれどゲーテが「自分がそれに対して何もなす余地のない時事問題には口を出すな」というようなことを言っていたが、「何もなす余地のない」ものに余計なエネルギーは使いたくない。それ以上に重要な問題がキャンバスの中でひしめき合っているからだ。

9月28日
○歌謡曲というか演歌の作曲家の市川昭介さんが亡くなった。ぼくが30代の頃、恥ずかしながら演歌のレコードを出すことになって市川先生に歌唱指導を受けたことがある。この間までテレビで素人相手に歌唱指導をしておられたが、ぼくは昔のことを思いだしてこの番組をよく見ていた。結局ぼくが交通事故になってレコードは出ないままになってしまったが、物凄く優しい先生だった。あの先生に指導してもらえば音痴のぼくでも自身をつけられるほどだった。それにしても旧知の人達が次々と鬼籍に入ってしまわれる。何だか並んで順番を待っているような気分になる。

9月27日
○丹波哲郎さんが亡くなられた。霊界の宣伝マンを自認した友で人の死後を熱心に研究した俳優さんです。生前丹波さんとはよく会いました。丹波さんの死はなぜか「おめでとう」と言いたくなります。人の誕生は霊界から見れば「御愁傷様」です。そして人の死は霊界から見れば「おめでとう」です。こちらと向こうは丁度あべこべというわけです。というのも生の世界は仮象で死の世界は実相だからです。きっと今頃、丹波さんは「死後は俺が言っていた通りだよ」ときっと大喜びしておられるのが目に映ります。

9月25日
○アトリエに行く道すがら金木犀の花の香りが追っかけてくる。追い払ったと思った頃また別の金木犀が道の曲がり角で待ち伏せている。家からアトリエまでズーッとぼくは金木犀をまるで守護霊のようにして連れ歩いている。

9月22日
○山中温泉の旅館のキーをうっかり妻が持って帰ってしまった。アメリカではこんな場合キーを郵便ポストに入れれば先方に配達されると聞いたので、日本でもそうしてみようと思ったら、キーに住所が書いてなかったので、宅急便で返送することになった。

9月13日
○公園のベンチに座るとエサもやらないのに鳩が沢山集まってくるので変だな、と思っていたら、いつものベンチに老人が座っていて鳩にエサをやっていた。鳩はきっとぼくとその老人を間違ったらしい。それも鳩の目にはぼくも老人も同じように映ったのかも知れない。

9月12日
○この間の雷雨の翌日いつも散歩へ行く野川がうんと川幅が広くなって流れが早く、泥水になっていた。沢山いた鯉の姿は見えなかった。子供の頃川が増水すると魚が沢山獲れたことを思い出し、どの辺に魚がいるかなーなんて、しばらく立ち止まって考えたりしていた。川面を見つめると妄想の魚が見えてくるような気がするのだった。

9月10日
○最近老境についてよく考える。外見は若者を装っているけれど、中身は健忘症が激しく、出不精で、多くの人と交わりたくない。孤独を愛する気持ちが大で、目的意識も薄く、死に対するロマンティシズムだけが快感である。この資質は若い頃からそんなに変わらないが、、、、、。小林秀雄は還暦に達する前から、老人意識が強かった人だ。60歳にも達しないのに隠居のことなど考えている。そして老境に達すると老境らしく考えるべきだという。三島由紀夫はすでに10代で老人だった。

9月8日
○目下成城学園前駅が駅ビルに変わります。駅ビルには色々なお店が入り、環境もかなり激しく変化しそうです。ぼくがこの町に引っ越してきた時には田舎の木造の駅で、夜になると人通りもなく淋しい限りで、それこそ田んぼ道を大きい声で歌を唄いながら帰ったものです。まだ狸もいたくらいです。新しいものが導入されて古き良きものが失われていきます。ますます古いものを求める気持ちが強くなる一方で、当然作品にも影響しています。

9月7日
○だいたい11時前に寝て、7時間きっかり眠って朝6時過ぎから散歩に出る。川沿いに小田急電車の巨大な格納庫があって、その屋上が公園になっている。だからかなり高台にいるという感じだ。朝の空気は清々しい。ベンチに腰を下ろして本を読むのが習慣で、ぼくにとっては貴重な時間になりつつある。この時間には子供は一人もいない。健康を気遣う年寄りが大半である。足元には鳩が寄ってくる。一度エサをやったのがクセになっているらしい。今日などは30羽位集まってきた。それが何の合図もなく突然大きい羽ばたきをして一斉に飛び立つ。誰か一匹が先に飛び立つのではなく30羽が同時行動だ。まるで30の意識があるのではなく、ひとつの意識のようである。われわれの中にも集合無意識があって、同時多発的な創造や行動を起こすことがある。新製品の発表や流行などもこの集合無意識に近いように思う。シンクロニシティなども同じことかも知れない。夢と現実がシンクロ二シティを起こすことだってある。夢という無意識が潜在意識と統合される時、それは起こるように思う。

9月5日
○少し涼しくなってきたので一週間ほど前からまた散歩を始めた。今日なんか5時半に起きて公園に行ったのに人出が多いのにはちょっと意外。ベンチで2時間位足元にやってくる鳩を相手に本などを読んでいると、絵のアイディアが次々と浮かぶ。アイディアを考えようとしない時の方がアイディアはやってくる。追求とか探求はぼくにはやっぱり無縁だ。

9月4日
○今日(9/4)オープンの東京ディズニー・シーの新アトラクション「タワー・オブ・テラー」を一般公開に先駆けて東京ディズニー・シー史上最 "恐" という恐怖のエレベーターを体験してしまった。この間の震度4の地震があった直後と、エレベーター事故が多発しているそんな状況でのこのアトラクションはかなり悪趣味。乗るまではゴシック的なお化け屋敷くらいに思っていただけにこの急転直下には一瞬仮死状態。怖いものは早く体験しておいた方がいいですよ。

9月2日
○今年古希を迎えた途端長く付き合っていた友人、知人が亡くなった。長年家族写真を撮っていただいた、カメラマンの安河内さん、長年シルクスクリーンの版画やポスターを刷ってくれていた岡部さん、郷里に帰ったらいつも会っていた同級生の岡田君は昨夜亡くなった。現世の友人、知人より鬼籍に入った者の数の方がそろそろ多くなってきたような気がする。と同時にこちら側のリアリティが虚実が逆転したように希薄になっていく。

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