9月30日
原稿を書き始めたら花火の音がしてきた。「ヒュー、ドカン、パチパチ、ダダダダーン、ドカン、ドカン」駆け出して行きたいが、原稿も書きたい。でも花火も見たい。すると無理に原稿を書こうとする。花火を見たい気持ちを押さえて原稿を書くストイックさも快感だ。だけどもっと素直になって、子供のように花火を見に行った方がいい。とこんなことを小一時間も考えながら原稿を書く。でも早く行かないと花火が終わるかも知れない。もし花火が終わったら後悔するに違いない。そこでアトリエを飛び出して花火の見える高台に行く。すでに近所の子供達がワーワーいいながら花火を見物している。花火が上がる度に、全員が「ハート」とか「メガネー」とか「ドセーイ」とか「スマイルー」とか感嘆の声を上げる。どうやら多摩川でも花火大会らしい。大きい花火が炸裂して「ドーン」と音がするまで7秒かかる。この7秒は多摩川と成城までの距離である。たっぷり花火見物ができて、満足する。後半になると、つい終わるのが気になって、早く終わって欲しいと願い出す。終わらない内に帰ると、また音だけを聞くことになって気になるからだ。やっと終わって花火から解放されて家に戻る。
9月28日
富永留美さん
確かに自然はそのままで美しいものです。さらに芸術家によって「芸術」という美を作ることも可能です。花は人間を見ていないかも知れませんが、感じているかも知れませんよ。
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おおのさん
おっしゃる通りかも知れませんね。でもぼくにとって危険を選択するのは精神の健康でもあります。
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呉村杏里さん
「マリ・クレール」の連載エッセイを読んで下さってありがとう。「生まれてくる魂もある意味亡くなった人と同じか」ということ、面白いことをおっしゃりますね。生まれてくる魂も死者の魂も魂には変わりないでしょう。
9月27日
娘の展覧会が南天子画廊で開催中だが、現代美術の巨匠方が見にいらしてくれているのに、本人は誰ひとり知らないので、相手の人を困らせているようだ。この間、篠原有司男さんがいらしてくれているのに、誰だか知らないので彼はとうとう、「俺は有名なんだぜ。あちらこちらで展覧会もやっているんだよ」と言わせちゃうので、恥ずかしいのは父親のぼくでありました。
9月26日
尾山裕加里さんへ
神戸の青谷には新婚21才の時、2〜3年住んでいました。青谷のバス停から少し下った所に川がありますね。その橋を渡って川沿いに山の方に歩いた所にあった2階建てのアパートにいました。バス停にはいつも松蔭女子学院の女生徒が沢山いて。彼女らとバスが一緒になるのを楽しみにしていました。今度三宮駅前のミント神戸(ここは元神戸新聞会館で震災前までの建物の6階にいました)一周年のイベントに少し関わります。詳しくは神戸新聞で。
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山本慎一郎さんへ
人が何と言おうともあなたが描きたい絵を描いて下さい。
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宮永留美さんへ
ぼくも他人の絵の中を歩きますよ。中には閉め出されて歩けない絵もありますけれど。これもインナートリップのひとつですね。
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野中英明さんへ
まだウォーキング・シューズは手に入れていません。やっぱり軽いのがいいです。でも健康が目的なのでデザイン最優先というわけにはいかないですね。
9月25日
渡辺義人さんへ
「銀河鉄道」のCGのご推薦ありがとうございました。温泉の紀行文と絵はフリーマガジン「5l」で発表していますが、そこで「銀河鉄道」をテーマにした絵をと思っていますが、どうなりますかねぇ。
9月24日
今日は涼しい。さっき駅前で雨に降られた。休日は時間が有り余る程ある。こういう日はエッセイを書くのにいい。エッセイは絵とは違った自分との対話だ。今日は絵を止めて夕方まで小説を読もう。小説は他人の人生との対話だ。
9月23日
新総裁に福田氏が決まった、福田氏とぼくは同じ1936年生まれである。同年に長嶋茂雄、古葉竹織、川淵キャプテン、山崎拓、亀井静香、岩国哲人、北島三郎、服部克久、竜鉄也、里見浩太朗、山崎努、夏木陽介、毒蝮三太、中原ひとみ、白川由美、野際陽子、市原悦子、大山のぶ代、立川談志、桂歌丸、つのだじろう、さいとうたかを、楳図かずお、和田誠、それに私がいることを今朝のスポーツ紙で知った。
9月21日
この間から小説を書き始めたと度々このブログで書いているが、書き始めてからの小説を読む態度がガラッと変わってしまった。つまり自分が書くように読むようになった。
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三島由紀夫の怪談を集めた本(筑摩書房)を買って読んでいたら三島さんが死ぬ歳に書かれた「心霊のポップコーン/横尾忠則論」が出ていた。三島さんの遺書的な要素もあり、読んでみて下さい。
9月20日
東京宝塚劇場で久し振りに宙組公演「バレンシアの熱い花」を観た。主役の大和悠河は彼女がまだ月組にいた10年程前から注目していたので、今やっとトップスターになったことは感慨深いものがある。今回は彼女のトップお披露目舞台にしては淋しかった。舞台美術があまりにもお粗末で主役が目立ちにくかった。彼女の不得意な歌だが、トップになるとこうも変わるかと思う程の出来映えに安心した。
9月19日 花巻温泉にて
帰りに宮沢賢治記念館に行く。もう三度目だけれど前回の記憶がほとんど失われている。賢治の童話は何編か読んでいるが、熱烈なファンとは言えない。でも全国からファンが沢山訪ねてきている。今になって思えば子供の頃か、若い頃に読んでおけば、大きい影響を受けたことだろうと残念に思う。
9月18日 花巻温泉にて
娘が東北の花巻は大水害で避難勧告が出ていると言ったが、沖縄、九州地方に台風が来ているので何かの勘違いだろうと思っていたら、本当に大変な状況で北上川などは湖のようになっていて、湖面の上を新幹線が走ったのであります。我々の走る少し前までは不通だったそうで、当日の夕刊に湖面と化したところの新幹線の鉄道写真を見てびっくり。とにかく橋桁近くまで泥水が増水していて、恐かった。
9月15日
安倍首相が辞任を出した為に、政界は揺れている。あさましい議員達は国政のことより低次元な自分達の選挙のことしか考えていない。国民にとっては虚構の世界を見せつけられている感じだ。それにしても安倍さんの突然の辞任は心的な自殺だとぼくは思った。
9月14日
阪神淡路大震災で破損が激しかった三宮駅前の神戸新聞社会館の跡地にミント・神戸が建造された。20才の時完成したばかりの新聞界間でぼくはデザイナーとしてスタートした。万感の思いで、ミント・神戸の中に入ったが、昔の面影はない。かろうじて建物の中から見る三宮の風景に昔の痕跡があるか、ないかというほどの変わりようだった。ぼくの頭の中には昔の三宮の風景が今も生きているが、当時に出会った人達に会うこともない。既にこの世にいない人も多い。そんな新しいミント・神戸で、今、宇宙線を感知してそれを光に変換するビルの照明が見られる。宇宙線は毎秒200個以上が飛来して、身体を貫いていうるという。そんな宇宙線がビルの壁面に光として表れている。目に見えない宇宙線をこうして感じることができが、実に神秘的で、流れ星のようだ。これもひとつの宇宙体験だと思う。
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震災直後の神戸は凄まじかった。何故か街に人の姿がなかった。そんな神戸も今はすっかり変わり、震災以前に増して活力がある。ぼくの知らない神戸だが、昔の神戸と結びつけるために、これから少し神戸に足を通わせてみたいと思っている。
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秀山祭九月大歌舞伎の夜の部「壇浦兜軍記」、「身替座禅」、「二条城の清正」を観る。「壇浦兜軍記」の玉三郎が、阿古屋役で実際に、琴、三味線、胡弓を演奏するのだが,中村歌右衛門以来この三曲の要素が必要なので、今日まで誰も演じていなかったように思う。見ものである。それと岩永役の段四郎が赤っ面で全て人形振り(文楽)で演じ、眉毛も仕掛けで動くところは実に滑稽である。「身替座禅」は最高におかしい。狂言仕立てで爆笑もの。
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北島聖子さんへ
メールありがとうございました。ぼくも猫を沢山失った経験が何度もあります。当たり前の論理ですが生あるものは必ず死にます。それにしても22歳とは随分長寿ですね。次元が変化しただけと考えれば死も生の延長です。「文学界」(9月号)に発表した小説と大いにこのことと関係あります。バックナンバーを手に入れるか図書館で読んでみて下さい。
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宮崎総子さんへ
度々のメールありがとうございます。「ミリキタニの猫」観ていません。ここ十年の間に映画3本「ハルク」と「赤い月」と「エゴン・シーレー」しか観ていません。最近は古典の舞台ばかりです。ビデオででも観てみます。
9月13日
茶谷伸さんへ
わが家のタマもなぜわが家を選んで入ってきたのか?ここにくる前はどこにいたのか?どこから、どんな道程を経て来たのか?生まれた場所は?今の感想は?と聞いてみたいことが沢山ありますね。
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北島聖子さんへ
ローマ字でS.KITAJIMAという方でニューヨークからでした。同姓同名なら偶然だと思います。ご安心を。
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有田英治さんへ
その節はありがとうございました。また熊本に行くようなことがありましたらお会いしましょう。ユニークな絵です。続けて下さい。
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Seichuuさんへ
久し振りの内容の濃いメールありがとうございました。考えてみたらもう7年間もこんなことをやっているんですね。無情さえ感じますね。
9月10日
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今年の夏の猛暑のため、歩かなかったので運動不足になった。何をするのにも基本は体である。体をよく動かしている時は創作も活発だ。食欲、睡眠も十分。ぼくの年令になると頭より体だ。頭の発する声だけに従っていると病気になりかねない。
9月8日
昨夜は中野区のY字路を撮りに行った。人一人いないY字路を撮るのがコンセプトなので、人の多い東京の街ではほとんど無理なのだが、それでも人がいなくなる瞬間を待って撮るのである。「東京人」に連載中の写真を見ていただければわかるが、人は写っていないはずだ。街の生活を撮るのが目的ではなく、むしろ建築写真を撮るのが目的だからである。
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「文学界」(9月号)に書いた小説の評(10月号)が思いもよらず高かったので、またその気になって二作目を書き上げ、目下三作目にとりかかっている。デザインを止めた途端、小説と写真が新しくレパートリィーになった。でも絵を止めるつもりは今のところ予定にない。もし止めれば書でも始めますか。
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なぜ小説を書いたかという弁は「文藝春秋」(10月号)に書いています。このブログには再録できないので、書店で立ち読みでもして下さい。
9月7日
昨日、チェコのブルーノのモラリアン・ギャラリーのキューレイターのマルタ・シルウ゛ェストローさんが来て彼女に聞いた話だけれど、2002年(だったかな?)にプラハが大洪水に見まわれた時、一人の男性の家を洪水が襲い、彼は家の中の板切れをサーフボードにしてサーフィンをしながら難を逃れれて助かり、有名になった。
もうひとつの話は動物園のイルカが洪水で川をどんどん下ってドイツの北海まで泳いで行って、そこで助けられ、そのイルカはヒーローになったが連れて帰る途中でショック死をした。そこでチェコの国民は嘆いて、喪に服したそうだ。なんだか二つとも寓話みたいだ。
9月6日
夢って時々救済の役目を果たしてくれることがある。例えば絶体絶命の窮地に追い込まれて、そこでパッと目が覚めた時などだ。「あっ、夢だったのか、助かった!」と思う時など本当に心からホッとするものだ。
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スピリクアルルに傾倒する人に多いのは日常軽視である。日常に足をしっかりつけることを忘れてはならない。創造も日常を離れてしまうと幻想だけを追うことになる。だから日常の小さいできごとに目を向けることが大事だと思う。以前もっと芸術について語って欲しいという意見があったけれど、芸術の原点は日常にあるということをもう一度考えてみて下さい。
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猛暑のあとは台風の季節だ。次々変化する日本の四季は体について認識するチャンスだととらえれば、これはこれで「摂理」と考えるべきかもしれない。
S.KITAJIMAさんへ
お礼が遅くなりました。ニューヨークのY字路写真ありがとうございます。タイムズ・スクウェアーは世界で最も有名なY字路です。でもスケールが大き過ぎて、ぼくの好みのY字路はこじんまりしたものです。イサム・ノグチ美術館がY字路にあるとは初耳。余談ですがイサムさんとはニューヨークで一緒に食事をしたことがありますよ。
9月5日
真夏の暑さはそれなりにカラッとして快適だったけれど、ここ2、3日のこの蒸し暑さは湿気が多く我慢ならない。皮膚だけでなく体の中までベトつく。勿論思考もベトつく。絵までベトつく。CDから流れる音楽までベトつく。
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今出ている「東京人」(10月号)に夜のY字路写真が掲載されている。夜のY字路撮影は危険で難しい。出来るだけ舞台の書割り風に撮ろうと努力している。近日中に中野区のY字路の撮影に行きます。夕方から夜にかけて。お勧めはありますか?
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今日は腰のMRIを撮る。全身タンクの中に入れられて、強烈な音の中で30分。ぼくはこの中で眠ってしまった。まるで戦場にいる様だった。現実というよりほとんど虚構。すると睡魔が襲うのですかね。
9月4日
片岸昭二さんよりソウルでの個展のレポートが届きました。
韓国の人たちの反応
これは、日本の人であれ、アメリカ人であれ、フランス人であれ、みんな、横尾先
生のポスターの刺激的な表現には、インターナショナルにみな感嘆するものだとい
うことがわかりました。
韓国の印象
ソウルだけの印象ですが、街全体いきいきと活気があるように感じました。よく
しゃべるし、よく食べるし、よく働くといったふうでしょうか。勝手な思い込み
で、人の年令にたとえると、日本は60、70才代の老齢で、韓国は30、40才代の働き
盛りという印象をもちました。
ゼロワン・デザインセンターについて
ここは、国民大学という名の私立大学に付設のセンターで、まわりには、演劇や音
楽関係の施設が集中しているところにあり、展覧会の案内は、ビルの壁面にでっか
く、派手に看板をかかげています。この国民大学は、デザインに力を入れており韓
国でも一、二位を争う有名大学だそうで、これまで、先鋭な世界のデザイナーの企
画展を実施しています。
ゼロワンデザインセンターは、以前から横尾先生の展覧会をいつかやりたいと思っ
ていたそうで、今回の実現を本当に喜んでいました。
しかし、なんといっても、国際交流基金ソウル日本文化センターの熱い思いがあっ
てのことです。このセンターが入っているところは興国生命ビルとかで、なんとそ
ばには、ボロフスキーの巨大なハンマーマンが、ゆっくりと動いていてびっくり、
館内ホールにも著名な現代作家の作品がさりげなくあり、これまたびっくり。セン
ターのイヨン・ホールはここの3階にあります。ここのセンターの一人が、これま
でのデザイン展で一番刺激的ですねと語っていました。
リナさんへ
長男は
"元祖日の丸軒"
によく行くらしいが、ぼくは昔一度だけ行ったことがあります。店内には長女の美美の絵も展示されているようです。
安井さんへ
お勧めのMBTのウォーキング・シューズを手に入れてみましょう。亡くなられたお母様に手紙を書かれたそうですが、良いことをしましたね。書いている時点ですでにお母様に想いは通じていますよ。
9月3日
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国際大学・ゼロワン・デザインセンターのビルボード |
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講演をする片岸昭二氏(富山県立近代美術館学芸員) |
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信じられないほど絵が上手くいかない時がある。従来の自分のスタイルを壊そうとした時だ。これを乗り越えれば新しい地平に向かう事ができる。後に戻れば安心。先に進めば危険。性格的にやっぱり危険な方を進んでしまう。
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ぼくは病院に行くのがそんなに苦にならないので、体に異変を感じるとすぐに病院に行く。一昨日は腰、今日は耳、明後日はMRI。それにしても病院は空港並みに混雑している。ぼくのように病院に行くのを趣味にしている人が多いのか、それともイヤイヤ行くのか、あるいは切羽詰まって行くのか。ぼくの場合は健康という安心材料を得るためだ。
9月2日
今日、また「方丈記」と「徒然草」を買ってしまった。それぞれ三冊目だ。どういうわけか古典は訳者が違ったりすると、思わず買ってしまう。ベッドの横にあったり、アトリエのソファーの上にあったり、トイレのマガジン・ラックの中に置いて、その時の気分でページを開いたところを読むことにしている。他にも「老師」や「壮士」や「論語」や「養生訓」も家のあちこちにある。カバンの中や洋服のポケットの中に入れたままで、思わぬ時に見つけて読むこともある。そんな出合いがしらにこそ、言葉は生きるように思う。
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ヘンリー・ミラー展のカタログを貰った。全く無邪気に浮かんだイメージをそのまま描いている。ピカソ、マチス、シャガール、ミロ、クレーなどの影響はあるけれど、逆に80年代の新具象絵画を先取りしているようでもある。プロの厳しさや苦悩はないが怖いもの知らずの子供の自由さに満ちあふれている。
9月1日
耳鳴りが激しいのと難聴と合わせて、最近は人の声が聞き取れなくなった。電話が特に聞き取れないので生半可な会話になる。あとは想像力を働かせて、理解するしかない。今日、瀬戸内寂聴さんと話していて、彼女はぼく以上にトンチンカンでこれはこれで会話になっているのだが、実に怪しいものだ。これからこういう会話が増えてくると思うけれど、「聞き違い集」ができそう。この前、瀬戸内さんに「草津温泉に行った」と言ったら、「北朝鮮に行った」と思って、「怖かったでしょう」みたいな話になる。少しこの手の話のズレをコレクションしてみよう。