5月28日
 3ヶ月にわたるカルティエ現代美術財団の個展がいよいよ5月28日で終わる。この間意識は個展会場やパリの街と強く結びついていたが、その糸もそろそろ切れそうになってきた。いつも個展が開催されていると、その場所と期間中見えない糸で結ばれていて、終わると同時にその糸も切れてしまう。そしてまた別の場所と結びついていく。ここにいながら同時にまた別の場所にも存在するという不思議な感覚だ。人はこのように色んな場所や人や物と結ばれている。そしていつか、何ともつながりを持たない日が来るように思う。

5月26日
 串本で漁船から上がったばかりのカツオを寿司屋の板前さんが漁港から急いで持ち帰り、間髪を入れずに目の前でさしみやにぎりにして食べさせてくれた。さらに獲れたばかりのカツオの心臓を口にすることができた。こんな新鮮な魚を食べてしまうと、しばらく他の寿司が食べられないような気がする。まだ口の中にあの美味な感覚が残っている。

5月22日
 週末は勝浦から白浜まで温泉の旅をした。行く先々で遭遇する出来事が、どれひとつとってもごく日常の些細なことばかりだけれども、そのひとつひとつがぼくにとっては重要なメッセージのように思えた。ただ、今まではそう気づかなかっただけのことだったのかも知れない。

5月19日
 今度サンタナ・ロータスのCDが発売されることになった。当時(1973年)のLPは22面体の画期的なアルバムで海外ではかなり前に発売されたが、今回は紙ジャケットのCDで出ることになった。デザインは当時のまま踏襲されます。

5月17日
 ある画廊がぼくのサイン入りの油絵を別の画廊から手に入れたと言って持ってきた。とんでもない偽物作品で結構な価格で購入しているので驚いた。似ても似つかぬ他人の作品にぼくの60年代のスタイルのサインを書き込んでいる。まさか現存の作家の贋作が出まわっているとはね。これは追跡調査する必要あるかも知れない。贋作のプロ集団がいると聞くが、この間岡本太郎の贋作が沢山出たと新聞に出たばかりだった。

5月13日
 この間ラジオで伊集院光さんの番組に出ました。彼は美術に対するコンプレックスが猛烈に強く、「美術は怖い」っておっしゃっていました。美術に対すること自体があまりないようで、絵は写真のように描くものだという考えが子供の頃に植え付けられたみたいです。こういう人は彼だけではなく沢山いるような気がします。それは頭や知識や教育で見ようとするからでしょうね。美術を言葉や考えに置き換えなきゃいけないという強迫観念があるようです。美術を生活や人生の中に導入して下さい。感応するだけでいいのです。

5月2日
 ぼくの病気遍歴をまとめた「病(やまい)の神様」(文藝春秋)という久し振りの単行本を出しました。目下病気の人、これから病気になると思う人、治った人、全く病気と無関係の健康な人を対象にしたエッセイ集です。病気と人生、創造は無関係でなさそうな病気に関する45のお話。

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