12月27日
今日で事務所は仕事納めですが、個人的には年末年始が最も制作にはかどる時期です。アーティストは本質的にはフリーですが、やはり世間が活動していると、身辺が落ち着きません。その点休日は命の洗濯になります。というか思索するための時間です。読書をする人は多いけれども思索する人は案外少ないのではないでしょうか。
1年が終わると、また年を取ったと思いますが、実は毎日年を取っているわけです。生まれた時から老化が始まっているのです。だけど肉体の老化が逆に精神を若返らせてくれる部分もあると思います。このことはある程度年を取るとわかるようになります。
12月23日
ウォーホルより好きだったアメリカのポップアーティストのトム・ウェッセルマンが17日心臓手術の後死去したというニュースを知って驚いている。1967年初めてニューヨークに行った時、ウェッセルマンに会いたいと思って彼の発表の場であるシドニー・ジャニスギャラリーに行ったが、聞き入れてもらえず、電話帳で捜したら、あったので電話をしたら、すぐ会いに来いということになり、「横尾忠則遺作集」を持ってアトリエを訪ねた。画集を見せたらえらく気に入ってくれて、自分の版画と交換しようといって大きい版画をもらった。彼にしては全く割りに合わない物に交換だったから、ぼくは信じられない彼の高価な作品を手にして、今も家にちゃんと飾っている。その時、「ニューヨークで制作し、この絵をもっと大きいキャンバスに描くといい」とアーティストに転向を示唆するようなサゼッションしてくれた。当時のぼくなグラフィックが好きだったのでアーティストに転向することはぼくの頭の中には全くなかった。今度ニューヨークに行くとその後ペーンターに転向した話をしてペインティング作品を見てもらう予定にしていただけに、残念で残念でならない彼の惜しまれ死である。73歳だった。
12月22日
以前だったら今の時期は忙しいのだが、今年は頼まれ仕事がないので実に快適である。ただアトリエで絵を描いたり、芝居を観に行ったり、ディナーショーの招待に足を運んだり、読書をしたり、自然の中を散歩したり、気の合った仲間と食事をしたり、そんな年末である。この夏の個展のための制作の疲れがまだ完全に取れていないので、骨休みには丁度いい。年末もできるだけ世の中の流れやスピードに逆行して反対方向に歩もうと思っている。精神的健康の秘訣である。
12月21日
銭湯シリーズの作品に対するいくつかの批評を読むと面白い。美術の歴史からの様々な引用について、その対象になった画家や作品名が挙げられているのを見ると、実におかしい。というか実におおまかなというか印象による指摘であって、評者はぼくの作品ではなく、引用したと思われる元の作品もちゃんと見ていないことに気付く。実に大雑把にしか美術作品を見ていないことに気付く。ちゃんと「眼」で見ていないのである。「頭」でしか見ていないので、とんちんかんな指摘をしてしまう。ぼくが種明かしをしないので、自由に想像してもらっていいのだが、それにしてもピント外れには思わず苦笑を禁じ得ないのである。
12月20日
加古川線電化に伴いデザインしたラッピング電車に同乗しました。各駅では鳴物入りの歓迎を受けながら、また沿線の人達のカメラのフラッシュを受けながら、「眼のある」電車が走りました。「乗りたい」と希望する人は多く、車内は超満員、また乗れなくてあふれた人達はホームで大混雑。見たことのない光景を体験しました。知事と車内で対談した時、車内にも絵を描く話になり、知事は早速西日本JR社長に電話され、「前向きに考えましょう」という返事をもらわれたそうです。電車の内外ともラッピングした車輌が実現しそうです。
画像はRECENT WORKを参照して下さい。
http://www.tadanoriyokoo.com/r-works/index.htm
12月19日
この間から海外通信欄を設けました。ロンドン、ニューヨーク、マドリッドに住む知人から時々現地の様々な情報が届きます。VISION 、BBSとあわせてアクセスしてみて下さい。マドリッドに住む神津善之助さんは目下帰国中なので来春からスタートします。ぼくもなるべくVISIONに書き込むつもりですが、つい怠けてしまったり、忙しくなってしまったりで、折角アクセツしていただいた方には申し訳なく思っています。極力「毎日」と思っているのですが、何を書いていいのやらわからないというのが現状です。日記といってもあまり変化のない毎日なので、これといった内容もなく、VISIONはいつもホトホト困っています。以前VISIONのテーマを寄せていただいたことがありましたが、これとてなかなかピタッと来なかったりして、書けないということが多々ありました。ぼくは社会の出来事に関してはそれほど興味がないので、やはり身の回りに起こった事柄が中心になるのですが、これがまたどーってことがないのです。そのくせ、エッセイなどは2本位連載を持っていて、この方はそれほど苦にならないのに、VISIONには全く想像が働かないのです。
12月18日
先日近所に住む俳優の土屋嘉男さんと近くの野川の鯉にパンのエサをやりに行きました。買ってきたパンは「上等すぎるよ」といわれ、食べて見ると確かに鯉にはもったいないかなと思いました。土屋さんは黒澤明監督の常連俳優ですが、黒澤さんはサツマ芋をつぶしてダンゴにして鯉のエサを作っておられたそうです。まあ、そこまですることはないので、あんパンや、クリームパンや、あん入ドーナッツなどで、自分の好きなものは鯉も好きだと決めつけています。最近はぼくが川に近づくだけで、急いでやってきます。70〜80センチもあるのが50匹以上押し合いへし合いしながら、まるでバスケットボールの選手みたいにもみ合いながらパンのエサを取りっこしている姿は中々エネルギッシュでパワーを感じます。鯉からパワーをいただいて再びアトリエで制作します。
12月17日
この間、あるラジオ番組で個展のプロモーションをしてくれるというので滅多に出ないラジオに出演したときの話である。
司会の大竹まことさんが面白い質問をされた。
「ピカソの絵は彼の眼があんな風にキュビズムに見えているんでしょうね」とおっしゃったのでぼくは思わず笑ってしまった。
「とんでもない。もしそうだったら危なくて外も危なくて歩けないじゃないですか。全ての物質は破壊されているわ、空間認識もできない、おまけにピカソが興味を持つ女性はみんな化け物ばかり、ということになりますよ」
「でもお笑いタレントから画家に転向した画家は本当に彼の描く絵のように現実がそう見えるっていっていますよ」
「もしそうだとしたら、彼は幻視者で、幻覚を見ているか、それとも精神に異常をきたしているかのいずれということになりますよ」
そんな馬鹿な、現実が絵のように見えるなんて本気に信じちゃ駄目です。ピカソにしたってタレントから転身した画家にしたってわれわれ正常の人間と同じように肉眼はちゃんとリアルに見ているのだ。ただ画家は現実をそのまま写すことには興味がないので、肉眼で見た物事を心の眼(感性)に置き換えて描いているに過ぎないのである。
対象を変形(デフォルメ)させることで自己の感覚や感情により近づけた表現をしたり、また絵画的造形の追求を通して絵画を二次元の問題としてとらえようという意思のために、写実から離れ現実を変容させているいるだけのことである。
だから現実が絵のように見えるという例の画家は、あのようにしか描けないのか、それともあのように描きたいのかそのどちらかである。画家の中には相手を煙りに巻くために「俺は俺の絵のように現実が見える」なんて現実と作品を同一化させてしまうちょっとペテン師的な資質の画家もいなくはない。
子供の絵は色も形もデタラメだ。だからといって子供があんな風に現実を見ているわけではない。技術的な問題がそうさせているに過ぎない。といって修練された技術によって描かれたプロの作品がレベルが高いかというとそうでもない。時には技術が作品を硬直させて自由な表現を失った作品は至るところにゴロゴロころがっている。
だけどこんな作品に結構な値段がつけられて、金持ちの居間や企業の会社の壁に権威づけられて飾られていたりするものである。この手の絵画は政治の政治の道具に使われ、またそれを望む画家もいるというわけだ。世の中には良い絵と良くない絵があるだけだ。ところが良くない絵が結構良い絵としてまかり通っているのもこの社会の怪しげな仕組みと大いに関係がある。
芸術は難しい。自分にとって良いと思う作品が必ずしも良い絵とは限らないからだ。では一体何を基準に評価すればいいのか、一度自らに問いかけて見るのも面白いのではないでしょうか。
12月15日
イギリスの美術関係者500人によって現代美術に最も大きい影響を与えた作品ということで、マルセル・デュシャンの「便器」が選ばれましたが、そのデュシャン展が横浜美術館で1月5日から3月21日まで開催されますが、Part
2のセクションに作品を出品しています。ぜひ見て下さい。
12月12日
来週の日曜日(19日)から加古川線(兵庫県)にぼくの絵が描かれた電車(二両編成)が走ります。車体には「眼」が沢山描かれています。「見る眼/見られる眼」です。当日の始発に同乗して車内で兵庫県知事と対談することになっています。加古川沿線にお住まいの方はぜひ走る眼のある電車を見て下さい。5年間走り続けるそうです。見るだけではなく乗ってもみて下さい。
12月10日
元宝塚のトップスターの安奈淳さんとNHK-FM「日曜喫茶室」で会いました。初対面だと思ったらそうでもなかったようです。「風と共に去りぬ」の初日のパーティーでお会いしたそうです。人の名前や顔を記憶するのが疎くなって困ります。ラジオでの話題は「タカラヅカ」が中心で、ファンにとっては安奈さんの話はきっと面白いと思います。今年の初め頃、夢で安奈さんがロスからグリーティング・カードを送って下さった夢を見ました。ぼくは会ったことがないと思っていたので、知らない安奈さんからの手紙は不思議だと思いました。そんな夢がもしかしたら彼女と会う前ぶれだったかと思うと、こんなちょっとした「人生」が楽しくなるものです。
12月5日
昨夜の台風で道路は街路樹の落ち葉で茶褐色一色になっていました。これはこれで実に美しいのです。アトリエの外に立て掛けていた卓球台が倒れているのには驚きました。さぞ大きい音がしたでしょう。川の鯉にパンをあげようと思って野川に行くと、すでに鯉はぼくを待っていたように沢山集まっていました。50センチ大の鯉が約50匹位集まってパン粉を競い合うようにして食べるのですが、アヒルも集まってきて、鯉より先に食べようとするのです。同時にどこから見ていたのか鳩まで来て、空中でパン粉を拾い受けてしまうの。空は青い色を絵の具でベタッと塗ったようで、どこを捜しても雲が見当りません。高台の公園からは真っ白い頂を見せた富士山がうんと近くに見えています。ぼくのアトリエからもよく見えます。公園のベンチであんドーナッツを食べながらベンチに腰を下ろして長い時間本を読んでいました。あんドーナッツが目的なのか鳩が一羽やってきました。二羽目も気付いてやってきましたが、最初の鳩がボスなのか、二羽目を追放したがるのです。これでも平和のシンボルとしてピカソの絵のモチーフになっているのです。気温は初夏並みで20度以上あったと思います。実にリラックスした日曜の午後でした。こんな日はアトリエで絵を描くより頭を空っぽにして自然に身を置くのが一番です。皆さんはどんな一日を過ごしましたか?
12月2日
BBSに寄せられている個展の感想心からお礼を申し上げます。
個展のあとさらに1点(10点目)描いて、目下マイアミのアート・フェアーに他の2点と共に行っています。そして今日銭湯シリーズの新たな作品に取りかかっています。これは熊本市現代美術館の個展の為の新作です。このシリーズはバス・ハウスの作品をもう少し発展させたもので、もっと「おかしい」もので、タンゴと温泉シリーズともいうべきものになりそうです。その内作品はRECENT
WORKでも紹介します。今日はこのくらいで。