10月30日
 ショーン・レノン君が遊びに来てくれました。ヨーコさんと入れ代わりだった。母親のヨーコさんはいたって健康で煙草、酒は飲まないで、とにかくよく歩くそうだ。そこまではぼくも同じだが、どうも子供の頃から虚弱体質で、今もよく風邪を引く。ショーン君は日本で美味しいものを沢山食べて体重が増えたので、次のプロジェクトの為に減量しなきゃと。絵の制作に入ると物をいうのは体力だから、つい沢山食べる。三島由紀夫さんは、週一回はステーキを食べていた。創作がいかに肉体的であるかが分かる。でも運動しないで肉を食べると最近は夜中に胸やけがする。散歩も1時間以上歩かないと脂肪が燃焼しない。散歩は1時間結構距離がある。このところ風邪薬が喘息を併発して微熱が出たので散歩は中断中。夏生まれのぼくはどうも冬は苦手だ。今日は個展中のギャラリーにオープン以来初めて顔を出そうと思っていたけど、雨が降って寒いので中止した。ショーン君とギャラリーで会う約束だったので、ギャラリーでショー君と会った人もいたかも知れない。今日は絵を描きながら本でも読みながらの一日になりそう。

10月27日
 体調のこと心配してくれてありがとう。もう回復して次の作品の制作に入る準備をしています。とりあえず海外に出す作品で、そのあとは来年の熊本市現代美術館の個展の為の新作シリーズです。目下は宝塚歌劇の舞台美術(雪組)ですが、これは大詰めに来ています。今日は寒いので冬支度の格好です。寒いのはどうも苦手ですね。暑いのは溶鉱炉のような夏のアトリエでの制作が終わったかと思うと、今度は冷蔵庫のようなアトリエでの制作が始まろうとしています。天井が高いので、エアコンが中々効かないのです。温度差できっと作品が変わるでしょう。作品は頭が描くのではなく体が描くからです。

10月25日
 個展のオープニングの翌日から体調を崩してしまい、予定などキャンセルしてしばらく静養です。個展が始まって一気に気が抜けて半年の疲れがどっと出たのかも知れません。新潟の地震で被害を受けられた方々には心よりお見舞いを申し上げます。

10月24日
 オノ・ヨーコさんと初めて会ったのは1970年の暮、ニューヨークのジャスパー・ジョーンズの家でジョン・レノンと一緒の時だった。この頃FBIが彼等の平和運動を監視していて、ビレッジの人目につかないような小さい家に住んでいた。この日はジョンとフォトセッションなどして、彼は二重写しのポートレイトを撮ってくれた。このサイン入りのジョンのぼくのポートレイトは今ではわが家の「お宝」だ。翌日ヨーコさんがホテルに電話をくれて、ディビッド・フロストショーというアメリカの人気番組にぼくもパフォーマンスの役で出演して、ジョンとヨーコのスタジオコンサートに参加した。このテレビは1971年の元旦の番組でアメリカ全土に放映された。それ以来オノ・ヨーコさんとは仲のいいアーティスト同志の友達となってニューヨークや東京では必ず会うようになった。ぼくはアーティストの友達は一人もいない。唯一オノ・ヨーコさんだけだ。そんなヨーコさんが個展のオープニングに駆けつけてくれて、次の日ロスに向かった。

10月23日
 宝塚劇場で制作中の舞台美術を見に行く。思い通りの絵が仕上がっていた。今までの舞台美術では一番の出来に一安心。来週もう一度最後の仕上げを見に行く。現場で描いている人を見ると自分もやりたくなる心境にかられる。でもそれをすると失礼になるので指示を与えるだけにした。それにしても小さい原画からどうしてあんな大きい絵が描けるのか不思議だ。また見る見る仕上げていく技術には舌を巻く。以前インドのシネアーティスト(映画の看板画家)と一緒にアーメダバッドでコラボレーションした時も、とてもかなわないと思った。まだまだ学ぶことは沢山あると思った。
 台風23号で郷里の西脇の川が氾濫して町の半分くらいが湖みたいになり、使者まで出た話を西脇の友人から電話で聞いた。実家のあったところは床上まで浸水したという。その友人は「早いとこ東京に行ってよかったなあ」という。西脇を出て50年経っているのに、まるで1時間ほど前に西脇を出たようなことをいう。

10月22日
 この間テレビでぼくの故郷西脇の警察とパトカーに石が投げ込まれたというニュースを見た。こうした事件が小さい山間部の町にも及んだかと、「西脇」が全国に報道されたことに何か怖いものを感じたと思ったら、今度は川が増水して町が水浸しになり、1万世帯に避難命令が出、二階に取り残された人をボートで救助したとかいう被害を又々テレビのニュースで「西脇」が報道されると、郷里が何か不吉なもののように思えてくるのだった。郷里というのはぼくの中では最も安心できる癒しの場所でもあるのに、こうした事件や事故が続出すると、ぼくの中の信頼が揺らいでしまうのである。

10月21日
 大雨にもか関わらず、個展のオープニングは大盛況で、会場内は人で、ゆっくり作品が見てもらえなかったのではと心配でした。来日中のオノ・ヨーコさんやラスベガスから、たった2日だけでまたスペインに行くというプリンセス天功さんも空港から直接画廊に駆けつけてくれたり、で、華やかな人達で他のお客様も大喜びだったようです。本人はというと、もうすでに描き終えた作品には未練もなく、早速次のマイアミのアートフェアーに出品の作品の制作に入らなきゃと思っています。あんまり時間を置くと中々制作に入りにくいので、なるべく早くと思っています。アーティストは音楽家やスポーツ選手と同じく毎日練習です。この勉強を怠ると、いざ大作という時に困るのです。

10月18日
 飾り付けも終わっていよいよ明日(19日)から個展(谷中のスカイザバスハウス)が開催されます。前にも言ったかも知れませんが、8年振りの画廊での個展です。谷中界隈には東京の下町が昔のまま残されていて、散歩には絶好の町です。色々の発見があります。たっぷり時間を取って訪れるときっと楽しめると思います。今回の新作は今までの作品のどの系列にも属していません。BBSに感想を寄せていただくと嬉しいです。
 考えてみれば、ぼくの作品の傾向は4年ごとに変化しています。そういえばフランシス・ピカビアも4年ごとにスタイルを変えていますが、彼はそれを戦略的にやってきました。ぼくはそうじゃなくて飽きてくるんです。4年で飽和点に達してしまうのです。なぜ4年なのかは自分でも不明というか謎です。といって今の銭湯シリーズが4年も続くとは思えないのですが、さあどうなるか?

10月14日
 VISIONの文章は日記つもりで書いていませんが、皆さんが日記だと思っているようですね。まあ絵だって日記みたいなものだから。実際の日記は毎日過去20年以上前から書いていますが、想いや感情は書きません。事実のみ列記しているだけです。
 早川良雄さんの「フォルムの関東、色彩の関西」は当たっていると思います。関東のデザインは形態重視で知的です。関西は感情先行で色彩的ですね。ぼくは関西出身だから色彩派ということになるかも知れませんが、絵画は先ず外形です。(これは内面表現ではないということです)また関西はラテン的でもあります。肉体的ともいえそうです。そう思って見ると面白いです。
 センスは学んで得られるものではなく、その人間の人格から生まれるもののような気がします。
 宝塚への関心はその人の中の男性原理と女性原理が合体した性質のどちらかというと精神の両性具有が引き寄せるものだと思います。これは創造の原理でもあると思いますが、その人の内部で男女の原理が合体していない人にとっては、宝塚はちょっと寄せつけないかも知れませんね。

10月12日
 19日オープンする個展に合わせて、オリジナルタオルを作りました。会場で実物を手にして下さい。飾るじゃけじゃなく、ぜひお風呂又は温泉で使用してみて下さい。個展の為のグッズの第二弾としてマグカップを目下制作中です。これは製造に色々条件があって少し難しいのですが、もし上手くいけば画廊で限定販売される予定です。他にスイス製の腕時計(モントレ・ソルマーレ)もオープンに合わせて販売されますが、これは一点一点が手作りなのです。スイスの有名な時計師ビンセント・カラブレーゼ氏の技術によって三種類限定100部の作品です。個展会場で見本を手にして下さい。

10月8日
 BBSの欄が快調ですね。だんだん理想の形になってきたかな、と感じています。トークショーみたいですね。
今朝は6時に散歩に出ました。まだ風景は白っぽい状態で、そんな中、人が一人増え二人増えてきます。きっとお勤めでしょうね。今日はコースを買えて1時間歩きました。30分でカロリーが消費され、1時間で汗びっしょり。帰ってすぐシャワーを浴びますが、今日みたいに寒い日はシャワーの為逆に体が冷えます。冬場の散歩は寝る前の方がいいと思います。風呂に入いってすぐ寝れば体も冷えることがないからです。今日は歩きながら、かつて禅寺に参禅していた頃のことを思い出しました。つまり歩く禅、歩禅ですが、禅堂で坐禅中に眠気に襲われる時など、堂内をゆっくり歩くのです。それを経行(ひんきん)といいます。だから散歩も経行だと思えばいいのです。できれば何も考えないのが理想かも知れませんが、そんな訳にはいきません。頭に去来する雑念に振り回されないで、それをただ客観的に眺めているだけみたいな状態です。一度やってみて下さい。結構難しいものです。慣れればどーってことないです。禅は座っている時だけではなく、日常生活に禅を持ち込むことを教えます。

10月7日
 絵というものはいいもわるいもないものです。思い切って描き切ったかどうかですね。迷いは迷いとして作品の中に残ってもそれは仕方ないものです。次回作が解決してくれることだってあります。作品や制作に重さを置き過ぎると生活を見失いそうになります。ぼくは作品あっての生活ではなく、生活あっての作品という考えです。最近の生活に一時間の散歩が加わりました。というよりも創作と生活の間に運動があるという感じです。

10月6日
 朝、久し振りの青空に爽快。三日続きの雨は野川の鯉には恵みの雨だったので、最近は雨嫌いのぼくも雨が降ると嬉しくなるのです。でも今日の雲ひとつない(あとになって少しは出たけど)青空に白い半月がくっきり浮かんでいて、白昼の神秘を感じました。月は夜のものと決めつけていましたが、昼の月もなかなかいいものです。ふとルネ・マグリットの作品を想像してしまいました。

10月3日
 イチローが84年ぶり大リーグ258安打の新記録を達成した瞬間思わず落涙しました。ジョージ・シスラーの257に並んだ時も落涙でした。とにかく1日中イチロー関連のテレビを何度見たか。こういう大記録の瞬間に立ち会うことも人生の醍醐味です。他人の人生の歓びを自分の人生の歓びにしないってことないでよね。人間って他人によって生かされているって感じます。今日は雨。野川の鯉も大歓び。鯉の歓びも自分の歓びです。
 先週金曜日は作曲家の一柳慧さんと文化村のグッゲンハイム展で公開対談。一柳さんとは1967年ニューヨークで4ヶ月近く、いつも会っていました。そんな懐かしい気分が時間を超えて「今」とひとつになりました。間もなく「一柳慧作曲オペラ横尾忠則を歌う」のCD豪華版が出ます。内容は追ってお知らせします。

10月1日
 今日、SCAI THE BATH HOUSEの個展の案内状ができて、これから発送する事になります。10月19日より11月27日までで、タイトルは "YOKOO - in the bath" で9点の制作(150号)です。内緒にしていたテーマもこの間の朝日新聞の夕刊の「ピープル」欄で紹介されてしまいましたが、タイトルの如く銭湯の女風呂です。このギャラリーは元銭湯でそこを改造したスペースで、再び女湯に客が戻ってきたことになります。場所や電話、地図はhttp://www.scaithebathhouse.com/main/01news/news/ja.htmlにアクセスして下さい。やっと8点完成し、当日までに9点目を描きます。ご来場をお待ちしています。